RN8-010|公共・倫理 対策問題
ハイデガーのいう「ひと(ダス・マン)」の説明として最も適切なものはどれか。
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正解: 3
正解
世間の平均的なあり方に埋没し、本来の自己を見失った匿名の存在様態
この問題のポイント
ハイデガーのひと(ダス・マン)の意味を問う。世間並みに流されて生きる匿名の非本来的なあり方、という規定が核心。
解説
ハイデガーは『存在と時間』で、日常における人間のあり方を鋭く分析した。日常の中で人は、「みんながそうするから」と世間の基準に合わせ、うわさ話や好奇心にまぎれて生きている。このとき、そこにいるのはかけがえのない私ではなく、誰でもない匿名の「ひと(ダス・マン)」である。
ひととして生きるあり方は、自己の存在を自分で引き受けることから逃げた非本来的なあり方であり、ハイデガーはこれを頽落と呼んだ。世間に埋没していれば安心だが、その代わり自分の生の固有性は失われている。
この状態から人を呼び戻すのが、死への存在の自覚である。死は誰にも代理できない自分だけの可能性であるため、死を先駆的に覚悟するとき、人はひとのあり方から抜け出して本来的な自己に立ち返る。現代の大衆社会批判にも通じる分析として、共通テストでも問われやすい概念である。
ひっかけポイント
新しい価値の創造者はニーチェの超人、超越者との出会いはヤスパース、公共空間での活動はアーレントの概念。ひと=匿名・平均化・非本来的、と結びつける。
選択肢の確認
①「限界状況に直面して超越者と出会った実存のあり方」
❌ 誤り。
限界状況で超越者と出会う実存はヤスパースの思想であり、日常への埋没を指すひとの説明ではない。
②「言論を通じて公共の空間に参加する自立した市民」
❌ 誤り。
言論による公共空間への参加はアーレントの活動の説明であり、ハイデガーのひとは逆に公共の世間に流されるあり方を指す。
③「世間の平均的なあり方に埋没し、本来の自己を見失った匿名の存在様態」
✅ 正しい。
正解。ひと(ダス・マン)とは、世間の平均的なあり方に埋没して本来の自己を見失った、匿名で非本来的な存在様態を指す。
④「力への意志に基づいて新しい価値を創造する理想的な人間像」
❌ 誤り。
力への意志によって新しい価値を創造する人間像はニーチェの超人であり、ハイデガーのひととは別の概念である。
覚えるポイント
- ひと(ダス・マン)=世間に埋没した匿名のあり方
- そのあり方への転落を頽落と呼ぶ
- 死の自覚が本来的な自己への回復の契機
共通テスト攻略
- 知識を関係で再現:用語を単独で思い出すだけでなく、「いつ・誰が・何のために・何を行い・何が変わったか」を一続きにして選択肢と照合する。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。