RN9-002公共・倫理 対策問題

倫理A 人間としての在り方生き方(2) ギリシアの思想

次の資料は、ある思想家が語った比喩である。「地下の洞窟に縛られた囚人たちは、背後の火が壁に映し出す影だけを見て、それを実物だと思い込んでいる。もし囚人が縛めを解かれて洞窟の外に出れば、太陽の光のもとで実物を見ることができるだろう(要旨)」。この比喩で思想家が主張しようとしたことの説明として最も適切なものはどれか。

解答・解説を見る

正解: 1

正解

感覚がとらえる現実の世界は影のようなものにすぎず、理性によって永遠不変のイデアを認識すべきである

この問題のポイント

プラトンの「洞窟の比喩」の読解。影=感覚がとらえる現象界、太陽のもとの実物=イデアという対応関係をつかめるかが問われる。

解説

資料はプラトンが『国家』で語った洞窟の比喩の要旨である。プラトンは世界を二つに分けた。
感覚でとらえられる現象界は生成消滅する不完全な世界であり、洞窟の壁に映るにたとえられる。一方、理性によってのみとらえられるイデア界こそ真の実在であり、洞窟の外の実物にあたる。
囚人が洞窟を出て太陽を見る過程は、魂が感覚の世界から向け変えられ、最高のイデアである善のイデア(太陽にたとえられる)の認識へ向かう哲学の歩みを表す。
人間の魂はかつてイデア界にあり、イデアへのあこがれ(エロース)を持つ。イデアを認識した哲学者が国を治めるべきだという哲人政治の主張もここから導かれる。

ひっかけポイント
形相(エイドス)が個物に内在するというアリストテレスの立場との混同が定番。プラトンはイデアを現実から独立した世界とした。

選択肢の確認

①「感覚がとらえる現実の世界は影のようなものにすぎず、理性によって永遠不変のイデアを認識すべきである」
正しい。
正解。洞窟の比喩では、壁に映る影が感覚のとらえる現象界、洞窟の外の実物がイデア界を表す。プラトンは理性によるイデアの認識こそ真の知だとした。

②「感覚的経験こそ知識の唯一の源泉であり、観察と実験を重ねて真理に到達すべきである」
誤り。
誤答理由: 観察と実験を知識の源泉とするのはベーコンら経験論の立場であり、感覚の世界を影とみなすプラトンの比喩の趣旨と正反対である。

③「本質は現実の個々の事物の中に形相として内在しており、現実を離れた世界は存在しない」
誤り。
誤答理由: 本質(形相)が個々の事物に内在するとしたのはアリストテレスであり、現実を超えたイデア界を立てるプラトンの主張とは対立する。

④「洞窟の中の素朴な生活のように、文明社会を離れて自然のままに生きることが理想である」
誤り。
誤答理由: 洞窟の比喩は文明批判や自然への回帰を説くものではなく、感覚の世界からイデアの認識へ向かう魂の向け変えを表している。

覚えるポイント

  • 洞窟の影は現象界、外の実物はイデア界を表す
  • 善のイデアは太陽にたとえられる最高のイデア
  • イデア認識にもとづく哲人政治を『国家』で説いた

共通テスト攻略

  • 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
  • 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
  • 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。

関連問題

RN9-001RN9-003