RN9-003|公共・倫理 対策問題
次の資料は、ある思想家の主張である。「人は家を建てることによって大工になり、竪琴を弾くことによって竪琴弾きになる。同じように、正しい行為を繰り返すことによって正しい人になり、節制ある行為を繰り返すことによって節制ある人になる(要旨)」。この資料に示された考え方の説明として最も適切なものはどれか。
解答・解説を見る
正解: 4
正解
性格にかかわる徳は生まれつき備わるものではなく、よい行為の反復と習慣づけによって形成されるという考え方
この問題のポイント
アリストテレスの倫理的徳(習性的徳)の資料読解。徳が習慣づけによって形成されるという主張を読み取れるかが問われる。
解説
資料はアリストテレス『ニコマコス倫理学』の要旨である。アリストテレスは徳を二種類に分けた。
知性的徳は教育によって発達する理性の徳で、思慮や知恵がこれにあたる。倫理的徳(習性的徳)は、よい行為を繰り返す習慣づけによって形成される性格の徳で、勇気や節制がこれにあたる。
資料の大工や竪琴弾きのたとえは、徳が生まれつきのものでも単なる知識でもなく、実践の反復を通じて身につくことを示している。
そして倫理的徳の基準となるのが、過度と不足の両極端を避ける**中庸(メソテース)**である。中庸は思慮によって見定められ、たとえば無謀と臆病の中庸が勇気とされる。
ひっかけポイント
「知れば必ず行う」というソクラテスの知徳合一と混同させる誤答が定番。アリストテレスは知識だけでなく習慣づけを重視した。
選択肢の確認
①「徳が何であるかを知りさえすれば、人は必ず徳のある行為をするという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 徳の知識が必ず徳の実践につながるとする知徳合一はソクラテスの立場であり、習慣づけを重視する資料の主張とは異なる。
②「人間の本性はもともと善であり、特別な努力をしなくても徳は自然に発現するという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 資料はまさに努力と反復によって徳が身につくと述べており、努力なしで自然に発現するという理解は正反対である。
③「徳は神の恩寵によってのみ与えられるものであり、人間の努力によっては獲得できないという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 徳を神の恩寵のみに帰する考えはキリスト教神学的な立場であり、実践の繰り返しを説くアリストテレスの主張ではない。
④「性格にかかわる徳は生まれつき備わるものではなく、よい行為の反復と習慣づけによって形成されるという考え方」
✅ 正しい。
正解。資料は『ニコマコス倫理学』の要旨で、大工や竪琴弾きの例により、倫理的徳(習性的徳)がよい行為の反復と習慣づけによって形成されることを示している。
覚えるポイント
- 倫理的徳は行為の反復・習慣づけで形成される
- 知性的徳と倫理的徳の二分類を押さえる
- 中庸(メソテース)が倫理的徳の基準
共通テスト攻略
- 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
- 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。