RN9-022公共・倫理 対策問題

倫理B 西洋近現代思想(5) 社会主義と実証主義・進化論

次の資料は、ある思想家の主張である。「労働者は自分の労働の生産物を自分のものにできず、労働は自分の本質を実現する喜びではなく、生きるためだけの苦役となっている。労働者は労働の外でようやく自分を取り戻し、労働の中では自分を失う(要旨)」。この資料に示された考え方の説明として最も適切なものはどれか。

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正解: 3

正解

資本主義のもとで、本来は人間の本質である労働が苦役となり、生産物も労働者のものとならない疎外が生じているという考え方

この問題のポイント

マルクスの労働の疎外論の資料読解。労働を人間の本質とみる人間観と、資本主義批判との結びつきを読み取る。

解説

資料はマルクスの初期の著作にある労働の疎外論の要旨である。マルクスは、人間の本質を、自然に働きかけて生産物を作り出し、他者と結びつく労働に見いだした(類的存在)。
しかし資本主義社会では、生産手段を持たない労働者は労働力を商品として売るしかなく、生産物は資本家のものとなる。労働は自己実現の喜びではなく、賃金のためだけの苦役と化す。これが疎外された労働である。
マルクスは、社会の土台は物質的な生産関係であり、それが法律や政治などの上部構造を規定するという唯物史観(史的唯物論)を確立した。生産力の発展と生産関係の矛盾が階級闘争を生み、歴史を動かすとし、エンゲルスとともに『共産党宣言』『資本論』で資本主義の変革を説いた。

ひっかけポイント
労働を天職とするカルヴァンの職業倫理や、見えざる手のアダム=スミスとの対比が定番。マルクスは資本主義下の労働を疎外ととらえた。

選択肢の確認

①「労働の苦しさは個人の心の持ち方の問題であり、社会の仕組みとは関係がないという考え方」
誤り。
誤答理由: マルクスは労働の苦しみを個人の心の問題ではなく、生産手段の所有をめぐる社会の仕組みの問題としてとらえた。

②「分業と自由な競争は見えざる手に導かれて社会全体を豊かにするので、労働者が苦しむことはないという考え方」
誤り。
誤答理由: 見えざる手による調和はアダム=スミスの見方であり、資料はまさに自由な市場経済の下で生じる疎外を告発している。

③「資本主義のもとで、本来は人間の本質である労働が苦役となり、生産物も労働者のものとならない疎外が生じているという考え方」
正しい。
正解。資料はマルクスの疎外された労働の要旨であり、人間の本質である労働が資本主義のもとで苦役と化し、生産物も労働者のものとならない疎外を指摘している。

④「労働は神から与えられた天職であり、労働に禁欲的に励むこと自体が救いの確信につながるという考え方」
誤り。
誤答理由: 労働を天職とみて禁欲的な勤勉を説くのはカルヴァンの職業倫理であり、資本主義下の労働を疎外とみる資料の立場とは異なる。

覚えるポイント

  • 労働は人間の本質であり資本主義下で疎外される
  • 唯物史観は生産関係が土台で上部構造を規定
  • 『共産党宣言』『資本論』で資本主義を分析・批判

共通テスト攻略

  • 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
  • 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
  • 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。

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