RN9-019|公共・倫理 対策問題
次の資料は、ある思想家の主張である。「あるものは自己の内にはらむ矛盾によって否定され、対立するものとの統一を経てより高い段階へと至る。愛によって結ばれる家族と、独立した個人が欲望を追求する市民社会との対立は、国家において総合され、そこに人倫が完成する(要旨)」。この資料に示された考え方の説明として最も適切なものはどれか。
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正解: 1
正解
矛盾と対立を通じてより高い次元へ総合される弁証法的発展をとらえ、家族と市民社会を止揚した国家において人倫が完成するとした
この問題のポイント
ヘーゲルの弁証法と人倫の三段階の資料読解。家族・市民社会・国家という展開の論理を読み取れるかが問われる。
解説
資料はヘーゲルの思想の要旨である。ヘーゲルは、あるもの(正)がその内部の矛盾によって否定され(反)、対立を保存しつつより高い段階へ統一される(合)という弁証法を、思考と現実の発展の論理とした。この統一を止揚(アウフヘーベン)という。
彼は、自由が現実の制度や共同体の中で実現したものを人倫と呼び、三段階で展開されるとした。家族は愛による自然な共同体だが個人の独立性を欠く。市民社会は独立した個人が欲望を追求する「欲望の体系」であり、人倫の分裂態である。
そして両者の対立を止揚した国家において、共同性と個人の独立が統一され、人倫が完成する。歴史を絶対精神が自由を実現していく過程とみる歴史観も重要である。
ひっかけポイント
人倫の三段階の順序と性格づけの入れ替えが定番。家族=愛の共同体、市民社会=欲望の体系(分裂)、国家=人倫の完成と対応させる。
選択肢の確認
①「矛盾と対立を通じてより高い次元へ総合される弁証法的発展をとらえ、家族と市民社会を止揚した国家において人倫が完成するとした」
✅ 正しい。
正解。資料はヘーゲルの弁証法と人倫の三段階の要旨であり、家族と市民社会の対立が止揚されて国家において人倫が完成するという展開を示している。
②「国家は個人の自由を抑圧するだけの装置であるから、最終的には廃止されるべきだとした」
❌ 誤り。
誤答理由: ヘーゲルは国家を人倫の完成態と位置づけており、国家を抑圧の装置として廃止を説く見方(無政府主義的な立場)とは正反対である。
③「家族こそ人倫の完成した形態であり、市民社会や国家は家族の純粋な愛が堕落したものだとした」
❌ 誤り。
誤答理由: 家族は人倫の出発点だが個人の独立を欠く段階であり、完成態はあくまで国家である。市民社会を単なる堕落とする理解も不正確である。
④「矛盾や対立は物事の発展を妨げる有害なものなので、できる限り避けるべきだとした」
❌ 誤り。
誤答理由: ヘーゲルにとって矛盾と対立は発展の原動力であり、避けるべきものとする理解は弁証法の趣旨と正反対である。
覚えるポイント
- 弁証法は正・反・合による発展の論理
- 人倫は家族・市民社会・国家の三段階で展開
- 市民社会は欲望の体系、国家で人倫が完成
共通テスト攻略
- 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
- 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。