RN8-022|公共・倫理 対策問題
ホルクハイマーとアドルノが『啓蒙の弁証法』で展開した主張として最も適切なものはどれか。
解答・解説を見る
正解: 4
正解
自然を支配するための道具的理性が人間自身の支配へと転化し、ファシズムのような野蛮を生み出した
この問題のポイント
『啓蒙の弁証法』の逆説的な主張を問う。人間を解放するはずの啓蒙的理性が、道具的理性として新たな野蛮に転化したという診断が核心。
解説
ホルクハイマーとアドルノは、ドイツのフランクフルト学派を代表する思想家である。ナチスの迫害を逃れてアメリカに亡命した2人は、共著『啓蒙の弁証法』で、近代文明への根本的な問いを立てた。なぜ人類を迷信から解放するはずの啓蒙が、ナチズムという未曽有の野蛮へと転落したのか。
彼らの答えは、近代の理性そのものの性格にあった。近代の理性は、目的の善し悪しを吟味することをやめ、自然を支配し、目的達成のための手段を計算する働きに切り詰められていった。この理性を道具的理性と呼ぶ。自然支配の道具となった理性は、やがて社会の管理と人間の支配にも向けられ、人間性を抑圧するにいたる。啓蒙が野蛮に反転するこの逆説が、書名の「弁証法」の意味である。
理性や社会のあり方を根本から吟味するこの学派の理論は批判理論と呼ばれ、のちのハーバーマスらに受け継がれた。
ひっかけポイント
理性の全面放棄を説いたのではなく、道具化した理性を批判し理性の自己反省を求めた。討議による合意は第二世代ハーバーマスの対話的理性の主張である。
選択肢の確認
①「啓蒙は理性の一方的な進歩であり、人類を野蛮から解放し続けるだけである」
❌ 誤り。
啓蒙を一方的な進歩とみる楽観こそ、ホルクハイマーとアドルノが問い直した当の前提である。
②「理性を全面的に放棄して、神話的な世界観に回帰すべきである」
❌ 誤り。
彼らは理性の放棄や神話への回帰を説いたのではなく、道具化した理性の自己反省を求めた。
③「自由な討議を通じた合意形成こそが理性の本来の働きである」
❌ 誤り。
討議による合意形成に理性の本来の働きをみるのは、第二世代のハーバーマスの対話的理性の主張である。
④「自然を支配するための道具的理性が人間自身の支配へと転化し、ファシズムのような野蛮を生み出した」
✅ 正しい。
正解。『啓蒙の弁証法』は、自然支配の道具的理性が人間支配へ転化し、ファシズムという野蛮を生んだという逆説を分析した。
覚えるポイント
- ホルクハイマーとアドルノは共著『啓蒙の弁証法』
- 道具的理性=目的を問わず手段を計算する理性
- 啓蒙が野蛮(ファシズム)へ転化したと診断
共通テスト攻略
- 知識を関係で再現:用語を単独で思い出すだけでなく、「いつ・誰が・何のために・何を行い・何が変わったか」を一続きにして選択肢と照合する。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。