RN8-029|公共・倫理 対策問題
生徒Bは「自然を支配する科学技術の理性が、目的そのものの善さを問うことをやめて手段の効率だけを追求するようになると、人間を迷信から解放するはずだった啓蒙が、かえって人間を支配し抑圧する野蛮へと転落してしまうと思う」と発言した。この発言に最も近い立場の思想家は誰か。
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正解: 1
正解
ホルクハイマーとアドルノ
この問題のポイント
発言の内容から思想家を特定する問題。「目的を問わず手段の効率だけを計算する理性への批判」=道具的理性批判、が特定の決め手。
解説
生徒Bの発言は、理性が目的の善し悪しの吟味をやめ、手段の効率の計算に切り詰められるとき、人間を解放するはずの啓蒙が野蛮へと反転し、支配と抑圧に転じる、という診断である。これはホルクハイマーとアドルノが『啓蒙の弁証法』で展開した道具的理性批判そのものである。彼らは、自然支配の道具となった近代的理性が、管理社会やファシズムという野蛮を生んだと論じた。
ハーバーマスは同じフランクフルト学派の第二世代で、道具的理性批判を受け継ぎはしたが、彼自身の主張の中心は、討議を通じて合意を形成する対話的理性の可能性を示すことにあり、発言のような診断そのものは第一世代の論点である。
ベンサムは快楽計算に基づく功利主義の思想家、デカルトは理性を真理認識の確実な基礎とした近代合理論の祖であり、いずれも理性への批判ではなく信頼の側に立つ。
ひっかけポイント
同じ学派のハーバーマスとの区別が最大の急所。理性の道具化への批判=第一世代、討議による理性の立て直し=ハーバーマス、と役割を分けて覚える。
選択肢の確認
①「ホルクハイマーとアドルノ」
✅ 正しい。
正解。目的の吟味をやめ手段の効率だけを追う理性が人間支配に転じるという診断は、ホルクハイマーとアドルノの道具的理性批判である。
②「ハーバーマス」
❌ 誤り。
ハーバーマスは同学派の第二世代で道具的理性批判を継承したが、啓蒙が野蛮へ転落したという診断そのものは第一世代の論点であり、彼自身の主張の中心は討議による対話的理性の可能性の提示にある。
③「ベンサム」
❌ 誤り。
ベンサムは快楽計算に基づく功利主義の創始者であり、理性の道具化を批判する立場ではない。
④「デカルト」
❌ 誤り。
デカルトは理性を確実な認識の基礎とみた近代合理論の祖であり、理性批判の発言とは方向が逆である。
覚えるポイント
- 道具的理性批判=ホルクハイマーとアドルノ
- 対話的理性の提唱=第二世代ハーバーマス
- 『啓蒙の弁証法』は啓蒙が野蛮に転化する逆説の分析
共通テスト攻略
- 知識を関係で再現:用語を単独で思い出すだけでなく、「いつ・誰が・何のために・何を行い・何が変わったか」を一続きにして選択肢と照合する。
- 因果の向きを確認:時期が近いだけで結び付けず、「原因→政策・行動→結果」の順に置き、主体と目的がつながるかを確かめる。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。