RN9-030|公共・倫理 対策問題
次の資料は、ある哲学者の主張である。「色を見、音を聞く刹那には、いまだ主もなく客もない。知る主観と知られる客観とが分かれる以前の、主客未分の直接的な経験こそが真の実在である(要旨)」。この資料に示された考え方の説明として最も適切なものはどれか。
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正解: 4
正解
主観と客観が分かれる以前の直接的な経験を真の実在ととらえ、西洋近代哲学の主客二元論を乗り越えようとする考え方
この問題のポイント
西田幾多郎の純粋経験の資料読解。主客未分の直接経験という概念を、二元論の立場や和辻の間柄と区別できるかが問われる。
解説
資料は日本初の独創的哲学書とされる西田幾多郎の『善の研究』の要旨である。
西洋近代哲学は、認識する主観と認識される客観を分けて考える二元論を前提としてきた。これに対し西田は、音楽に聞き入っているときのように、主観と客観がまだ分かれていない主客未分の直接的な経験、すなわち純粋経験こそが最も根本的な実在であるとした。
主観や客観は、純粋経験があとから反省されて区別されたものにすぎない。西田はこの立場から、真の自己を知り人格を実現することを善ととらえた。
彼の思索は参禅の体験に支えられており、後年は、有と無の対立をも包む場所の論理、絶対無の思想へと深められていった。
ひっかけポイント
間柄的存在を説いた和辻哲郎との混同が定番。純粋経験・主客未分・善の研究は西田、間柄・倫理学は和辻と対応づける。
選択肢の確認
①「人間は孤立した個人ではなく、人と人との間柄においてはじめて存在するという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 人と人との間柄における存在として人間をとらえたのは和辻哲郎であり、経験の主客未分を語る資料の内容とは別の思想である。
②「精神と物体は互いに独立した二つの実体であり、世界は両者から成り立っているという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 精神と物体を独立した実体とする物心二元論はデカルトの立場であり、資料はまさにその主客の分離以前を問うている。
③「人間の認識は、経験に先立って主観に備わる形式が対象を構成することで成立するという考え方」
❌ 誤り。
誤答理由: 主観の形式が対象を構成するというのはカントの認識論であり、主客の区別そのものを派生的とみる純粋経験の立場とは異なる。
④「主観と客観が分かれる以前の直接的な経験を真の実在ととらえ、西洋近代哲学の主客二元論を乗り越えようとする考え方」
✅ 正しい。
正解。資料は『善の研究』の要旨であり、主観と客観が分かれる以前の主客未分の純粋経験を真の実在として、西洋近代の二元論を乗り越えようとした西田幾多郎の思想である。
覚えるポイント
- 純粋経験は主客未分の直接的経験
- 『善の研究』で主客二元論の克服を図った
- 後年は絶対無の場所の思想へ展開
共通テスト攻略
- 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
- 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。