KZ-R8H-18|歴史総合・世界史探究 対策問題
図ⅠからⅡへの領土拡大は、ローマ共和政の社会に大きな変化をもたらした。その説明として最も適切なものはどれか。

解答・解説を見る
正解: 3
正解
属州から安価な穀物や奴隷が流入し、中小農民が没落して貧富の差が拡大した
この問題のポイント
地中海征服がローマ共和政の社会に与えた影響を問う問題。属州からの安価な穀物と奴隷の流入→中小農民の没落→格差拡大という因果連鎖で、共和政の動揺を説明する。
解説
ローマ軍の主力は、自分の武具を自弁する中小農民の重装歩兵だった。ところが長期の遠征で農地は荒れ、帰還しても属州から流入する安価な穀物に押されて経営が成り立たない。
一方、有力者は征服戦争で得た奴隷を使い、ラティフンディアと呼ばれる大土地所有制の農場でブドウ・オリーブなどを栽培して富を蓄えた。
没落した農民は土地を手放して無産市民としてローマ市に流れ込み、「パンと見世物」を求める存在となった。市民兵に支えられた軍の基盤も崩れていく。
この危機に対し、前2世紀末のグラックス兄弟は自作農の再建を目指す土地改革を試みたが、反対派に阻まれて挫折した。以後、ローマは「内乱の1世紀」と呼ばれる抗争の時代に入り、共和政は帝政への道を歩むことになる。
ひっかけポイント
貴族と平民の身分闘争は前5〜前3世紀の共和政前期の出来事で、征服の完成より前。対外的な「繁栄」と国内社会の「動揺」が同時進行した点が読みどころである。
選択肢の確認
①「身分闘争が始まり、貴族と平民の対立が初めて生じた」
❌ 誤り。
貴族と平民の身分闘争は前5世紀から前3世紀の共和政前期に展開したもので、地中海征服による社会変化より前の出来事である。
②「商業がすべて禁止され、農業だけの社会に戻った」
❌ 誤り。
地中海統一はむしろ属州との交易や徴税請負で商業を活発化させた。商業の全面禁止という事実はない。
③「属州から安価な穀物や奴隷が流入し、中小農民が没落して貧富の差が拡大した」
✅ 正しい。
正解。属州からの安価な穀物と征服で得た奴隷労働が中小農民の経営を圧迫し、没落した農民が無産市民化して共和政の基盤が揺らいだ。
④「征服地の土地が全市民に均等分配され、自作農が増加して共和政は安定した」
❌ 誤り。
征服地の公有地は有力者による占有が進み、均等分配は実現していない。自作農はむしろ減少し、その再建を目指したグラックス兄弟の改革も挫折した。
覚えるポイント
- 属州の安価な穀物と奴隷制ラティフンディアが中小農民を圧迫
- グラックス兄弟の改革(前133年〜)は挫折
- 以後は内乱の1世紀を経て帝政へ
共通テスト攻略
- 資料を先に観察:題名・年代・作成者・注記・凡例・単位を確認し、資料に直接示された事実と、知識から推測した内容を分ける。
- 既習事項と接続:資料中の固有名詞・制度・数量の変化を手掛かりに、同時代の政治・社会・対外関係へ結び付ける。資料にないことを印象だけで補わない。
- 比較軸をそろえる:二つの時代・地域を、政治の担い手、土地・税制、対外関係、社会への影響など同じ軸で比べ、共通点と相違点を混同しない。
- 消去の軸を固定:各選択肢を「時期・主体・目的・内容・結果」に分け、一か所でも歴史的対応がずれるものを消す。語句が一部合うだけで選ばない。